稲葉ほたての仕事メモ

ウェブの編集者/ライターやってます。仕事のメモを置いておく予定でした。

11月のお仕事いくつか

11月に外に出た仕事を、いくつか置いておきます。

自作ゲームフェスのクリエイター応援インタビュー企画第五弾


忘れられたゲーム史「パソコンゲーム」――元自作ゲーム少年・志倉千代丸が”シュタゲ”に込めた想い:ニコニコ自作ゲームフェス:ニコニコ自作ゲームフェス(ニコニコ自作ゲームフェス) - ニコニコチャンネル:ゲーム

 

D担から「もうひとり誰か書いて!」と相談されて、「じゃあ、志倉さんで!」とお願いしたのが執筆の経緯。

この記事のリード文にも書いたけど、ドラクエ開発者の中村さんやポケモン開発者の増田さんたちに話を聞きながら、パソコンゲームから始まったゲームの潮流が明らかにあったのだなあ、と初めて気づいた。その後、自分なりに調べてみると、後に家庭用ゲーム機でRPGなどのストーリー要素が強いゲームを発展させたクリエイターたちは、軒並みそこが出自だったことがわかってきた。そのときに、自分はパソコンゲームという存在に、初めて興味が湧いた。

とはいえ、もちろん自分はマイコン世代でも何でもなく、周囲も含めてそもそもWindows95以降のPCしか知らない。しかも、世に出回ってるゲーム史の本を読んでも、ファミコン以前のエレメカや「ゲーム&ウォッチ」のようなエレクトロニックトイの話に触れてはいても、日本で独自に華開いた、80年代のホビーパソコンのゲーム文化にはほとんど触れていない。

 

教養としてのゲーム史 (ちくま新書)

教養としてのゲーム史 (ちくま新書)

 

自分の知る限り、そこを一番きっちり史観に組み込んでいたのが、この本。他にあるのかしら? 

 

という辺りで、そこに一番詳しい人に聞ければと思って、志倉さんにお願いしたのだった(もちろん、彼が若いクリエイターの育成に熱い思いを抱いているのは知ってたので、そこは当然踏まえつつ、である)。実は、興に乗った志倉さんがガチで一本一本のゲームの論評していたのを原稿に反映できなかったり、「いや、ファミコンの話もしなきゃダメでしょ!」と話し始めようとしたのを取材時間の問題からぶったぎったりしていて、その辺が少し残念。いずれ何かの機会にまた取材させていただけると……!

 

PLANETSの編集担当連載(尾原和啓さん、落合陽一さん)


尾原和啓『プラットフォーム運営の思想』第4回「SNSの危険性を考える――ビジネスモデルは現代のリベラルアーツ科目である」 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.204 ☆:ほぼ日刊惑星開発委員会:PLANETSチャンネル(PLANETS/第二次惑星開発委員会) - ニコニコチャンネル:エンタメ

 

 楽天執行役員の尾原和啓さんの連載の第四回。尾原さんというのはiモードの立ち上げやGoogleの日本進出に関わってきた凄腕のビジネスマンで、ネット業界では知る人ぞ知る裏方の用心棒(?)みたいな人である。そんな人から体系的にプラットフォーム運営の手法について訊いてしまおう、という大変にありがたい企画がこの連載である。

 

ITビジネスの原理

ITビジネスの原理

 

 

今回は、GoogleFacebookのようなメガプラットフォーマーや生活系のウェブサービスが、これまで公共圏が担っていたような領域に踏み込みだしている中で、資本主義の競争原理がどういう形でバッティングしてしまうのか、という問題について語っていただいた。率直に言うと、具体的な話題については、別に普段業務をしている人には珍しくはないと思う。でも、背景にある世界観は、大変に問題提起的である。

「どんなに偉そうなことを言っても、企業って所詮は金儲けせざるを得ないんだよね」というお話ではあるのだが、これはちっともつまらない話題ではなく、むしろ本質でさえある。自分としては、21世紀の社会運営における最大のテーマの一つくらいに思っている。というわけで、タイトルの副題には「ビジネスモデルは現代のリベラルアーツ科目である」と入れさせていただいた。

 


現代の魔術師・落合陽一連載『魔法の世紀』 第4回:「アルテス・メカニケーへの回帰」 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.194 ☆:ほぼ日刊惑星開発委員会:PLANETSチャンネル(PLANETS/第二次惑星開発委員会) - ニコニコチャンネル:エンタメ

 

 最近は嵐の番組なんかにも出ているメディアアーティスト・落合陽一さんの連載の第四回。落合さんとの打ち合わせは、毎回新しい話題や概念がいくつも飛び出してくるので面白い。今回は、「足し算の体験」と「掛け算の体験」の着想がツボだった。

例えば、YouTubeが登場したのを見て、料理動画専門サイトとか報道動画専門サイトをつくろうとするのが、「足し算」の発想(この場合には、専門化の戦略なので「引き算」というべきかもしれないけど)。それに対して、すべての動画にコメントを掛け合わせるという発想(ニコ動ですね)でつくるのが、「掛け算」の発想。

こういう着想で見ると、ウォークマンなどの発明のどこに普及力が宿っていたのかが明瞭に見えてくる。それを「体験の包括性」のような原理を設定することで説明できると合点がいった点も含めて、実は「俺得」な回だった。

 

ついでに自分の連載も。


なぜチャットは「部屋」なのか(稲葉ほたて『ウェブカルチャーの系譜』第3回)☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.209 ☆:ほぼ日刊惑星開発委員会:PLANETSチャンネル(PLANETS/第二次惑星開発委員会) - ニコニコチャンネル:エンタメ

 

ああ、俺はマニアックな話を書いてるなあ、と思いつつ執筆していた回。ちなみに、自分と他者の関係を三つに分類する発想は、とある思想家の理論を下敷きにしている。

実はこの説明の理路は、自分なりに当時のQ2研究の本を読み込む中で、不気味なくらいにその思想家の議論が当てはまることに気づいたことで(特に吉見俊哉の「空間」のメタファーの辺りなど、彼の極度に抽象的な心理学系の議論の、見事なまでの具体例になっている)採用した。久々に優れた思想というものの切れ味を見たように思う。

本当は、もっと早めに具体的なウェブカルチャー史の記述に進みたいのだけど、ひとまずはこの辺の原理的な議論を詰める必要がどうしてもある。いずれここで置いた議論が効いてくるので、読者の方にはもうしばらくお付き合いいただけると。 

 

THE PAGEに書き始めました

先々月から書き始めたのだけども、出すと必ずヤフトピの方からバカスカ読まれるので、大変に、大変に大変に気持ち良い。ヤフトピ砲を浴びると、マジで3日くらいめくるめく気分で生きられる。マイナスイオンとか目じゃない。

ちなみに、ヤフトピに掲載されるのはもう一つ良いことがあって、日本の他のウェブサービスには出てこないようなユーザーたちの声が聴けることである。ブロゴスだのはてなブックマークだの2chだのに憤慨してるようでは、全然ダメなのであって、日本のインターネットの真髄を味わいたければ、ヤフーニュースのコメント欄に尽きる。

特に先日書いたゲーム実況の解説記事についていた、「デリヘル嬢にゲームを実況してみせると、本番できる確率が上がるからオススメ」という内容のコメントには、そのあまりにあんまりなリアリティに大変に感銘を受けました。


Yahoo!ニュース - YouTube のCMでも話題 ゲーム実況で大人気「マックスむらい」とは?【動画】 (THE PAGE)

 大人気のマックスむらいさんのインタビュー記事。たった30分だけの取材だったけど、とても鮮烈な印象を受けた。詳しい内容については、動画の方でほぼノーカットで収録されているので、ぜひ。

 

マックスむらい、村井智建を語る。

マックスむらい、村井智建を語る。

 

 

 この人、実は経歴をちゃんと見ると、只者じゃない。高卒でいきなり社会に飛び込んで、若くして上場企業の執行役員になってる、結構とんでもない人だった。単なるゲームが上手なオジサンだと思うと、大間違いである。

 


Yahoo!ニュース - 隆盛スマホゲーム その歴史と現実は? (THE PAGE)

 

ねとぽよ時代から、折に触れて追いかけてきたソーシャルゲームの歴史を、ヤフーニュースの読者に向けて簡単に書き記した文章。

率直に言ってしまうと、自分はアバターサービスの亜種としてのソーシャルゲームにしか興味がない。なので、『パズドラ』以降のスマホゲームは、単によく出来たゲームが順当に売れているだけでしかないよなあ、と思ってるし、だからソシャゲ朝生も2013年でFINALにした。だって、もう別に(本質的には)ネットの話じゃないんだもん。

そんな感じなので、職業柄ニュースを追いかける以上の興味は既に抱いていない分野だったのだけど、久々にいろいろな人に現状を取材できたのは楽しかった。あと、現在のスマホゲームの起源が、海外のMafia Warsのようなものではなくて、ハンゲームなどのアバターサービスにあると指摘した文章は、実はほぼないので、そういう話がヤフーに載ったという意味では書く意義があったのかもしれない。